その声だけで、背骨の奥にゾクリとした熱が走る。
胸の内側をくすぶるような低い響き──
どこにも触れられていないのに、
肌が、内側からゆっくり濡れていくのがわかる。
動けない。けれど、逃げたいとも思わなかった。
じわじわと身体の奥が疼いていく。
濡れた空気、肌にかかる吐息の音。
そのすべてが──熱と快楽の輪郭だけを、
くっきりと私に刻みつけていく。
目を閉じれば、そこにあるのは彼の指先。
触れてもいないのに、奥の奥まで反応してしまうのが怖かった。
それなのに、もっと深く触れてほしいと願っていた。
私はきっと、あの時すでに──彼に堕ちていた。
第一章:境界の狭間で、奥まで響く声
「……っ、やめ……ッ」
掠れた声が、乾いた喉の奥で溺れて消えた。
触れられたのは、手首。
優しくもなく、荒々しくもない。けれど、“確かにそこにある”熱。
その温度に、皮膚の内側がふるえた。
彼の指が滑った瞬間、神経の奥でじんわりと疼きが広がっていく。
熱が──ゆっくりと、でも確実に身体の奥へ沈んでいく。
(また……だ)
視界が揺れる。
数秒前の記憶さえ曖昧なのに、“知らないはずの光景”が瞼の裏に焼き付いた。
夜景のにじむ高層ビル。静まり返ったラウンジ。
そして、その隣にいたのは──確かに“彼”だった。
「……何が見えたの?」
囁くような声が、耳の奥をくすぐる。
それだけで、吐息がひとつこぼれる。
「君の脳がそれを思い出すたび、少しずつ“戻っていく”。
……でも、それが本当に幸せかどうかは、わからないよ」
低く落ち着いた声音に、微かに揺れる焦燥の気配。
言葉が甘いのに、なぜか肌がざわつく。
「ねえ──自分が誰だったか、思い出したい?」
その声は、“誘い”だった。
返事の代わりに、私は視線を床へ落とす。
黒ずんだコンクリート、ひび割れた壁。
崩れかけたこの空間が、いまの“私の現実”。
「……あなたは、誰?」
やっと絞り出した声は、ひどく震えていた。
彼は、微笑んだ。
「僕?……そうだね。君にとっては“鍵”みたいなものだよ」
「鍵……?」
「触れるたびに、閉ざされた扉が少しずつ開いていく。
君の身体が先に──思い出してしまうんだ、ひとつずつ」
その言葉と同時に、彼の手がそっと頬に触れる。
一瞬の沈黙のあと、ぶわりと熱が脳内に立ちのぼった。
まるで、皮膚の下に仕掛けられた記憶が目を覚ますように。
──誰かの指。囁く声。柔らかく濡れた音。
思い出すより早く、感じてしまう。
思考の奥で、カラダが勝手に反応していく。
記憶か、快楽か、その境界すらも曖昧なまま──
私はまた、彼の手に囚われていく。
※この空気が好きな方へ
第二章:声にならない熱が、肌を濡らす
「……っ、触らないで……っ」
首筋にかすかに触れた指先を、咄嗟に振り払おうとする。
でも、カラダに力が入らない。
逃げたいのに、喉は乾いて、息すらまともに通らない。
「……怖がらないで。君が思っているほど、悪いことはしないよ」
低く、優しい声。
なのに、その響きの奥にひそむ熱に、心臓がきゅっとすくむ。
その声だけで、鼓膜の奥が震える。
「いや…っ、わたし…あなたのこと、知らない……っ」
首を振ろうとしても、脚が動かない。
この場所に縫い止められているみたいに、体が震えたまま硬直していた。
「……そうだね。覚えてない。……だから、確かめようか」
頬に、指が触れる。
たったそれだけで、背筋が跳ねた。
皮膚の奥、記憶の深い層がかすかに軋んで、
そこから、一滴の熱が染み出していくように──
──髪を撫でる感触。
──背を這う熱。
──耳元で囁く、低く甘い声。
「……ん、っ……く……ぅ……」
声にならない熱が、喉奥から零れる。
拒もうとしたはずのその吐息は、どこか甘く、艶を帯びていた。
自分でも思わず両腕を抱きしめ、震える肩を押さえる。
「君の身体は、覚えてるんだよ」
男の声が、耳奥に深く沈んでくる。
まるで、肌の内側を撫でながら話しかけてくるような、そんな声音で。
「意志なんて、もう追いつけないよ。
……本能の方が、ずっと正直だから」
「……ちが……っ、こんなの、知らない……私……っ」
「じゃあ──確かめよう。本当に“知らない”のかどうか」
頬から、耳の後ろへ。
滑るように移動する指先に、目の奥がちかちかと霞む。
そして、次の瞬間──
全身がぴくん、と跳ねる。
怖かったはずだった。
なのに、震えながらもカラダの奥がきゅっと疼いた。
「……はぁ、あっ……」
その吐息は熱く、濡れていた。
耳元で囁かれる低い声が、追い打ちをかける。
「“知らない”って、言いながら……
ねえ、それでも、ここまで濡れるんだ?」
囁きが肌に触れるたび、
私の奥がじわじわと熱を帯びて、知らない感覚を広げていく。
逃げたい。なのに、もっと欲しくなる。
声にならないまま、熱だけが──肌を濡らしていく。
第三章:熱だけが、私を暴いていく
「……ぁ……、やめて……」
喉の奥で擦れた声が、雨音のように儚く空間に溶けていく。
薄闇の中、すぐ耳元で熱が震えていた。
耳の裏に触れた指先が湿っている。
それが汗か涙か──それとも、欲で滲んだ熱かなんて、もうどうでもよかった。
「やめるよ。……少しだけ、君を、ほどいてあげる」
その言葉が、皮膚の内側に染み込んでいく。
声だけで、背筋がじわりとしなる。
彼は近づいていない。触れてもいない。
それなのに、肌が焼けそうに熱くなる。
「な、なに……を……っ」
「……何もしてない。まだ」
唇の端に微笑みが浮かんでいた。
優しさと支配が混ざり合った、男の気配。
けれどその声は、まるで呼吸そのもののように──
肺の奥まで、ゆっくりと侵入してきた。
「君の呼吸が変わった。今、胸が震えたよね」
「……っ、ちが……っ」
「本当に?」
耳元で、息が擦れる。
それだけで、喉の奥から震えるような吐息が漏れた。
「……ん、っ……は……ぁ……」
自分でも驚くほど、熱く、甘く、艶を帯びた声だった。
なのに彼は、まだ触れてこない。
ただ、距離を詰めるだけで──空気が疼く。
「……ここまできても、君は逃げてない」
脚は動かない。腕も、上がらない。
どこかで、“もっと”を待っている。
「……嘘。そんなの、望んでない……」
「なら、言って。――“やめて”って」
唇は震えているのに、言葉が出ない。
拒もうとしても、もう体が──先に感じてしまっていた。
「……ほらね」
彼の囁きが、首筋に降る。
「君の沈黙は、もう“もっと暴して”って、聞こえるよ」
そしてその声のまま、
彼の指が──ついに、唇に触れた。
第四章:くちづけで、記憶が濡れていく
唇に触れたその指先は、まるで記憶そのものだった。
懐かしいのに、思い出せない。
なのに、身体が確かに──それを知っていた。
「……は、ぁ……っ」
わずかに開いた唇から、くぐもった吐息がこぼれる。
濡れた音が、空気に混ざる。
指先ひとつなのに、肌の奥まで染みてくるみたいに。
「……ここ、覚えてる?」
耳元で、熱が震える。
囁きに滲む声の色が、全身をじわじわ包み込んでいく。
唇から、顎のラインをゆっくりなぞって──
指先が、首筋へと滑り落ちる。
「ここが好きだったよね。
優しく吸われると、すぐ熱くなって……ここも、ここも──」
首筋にそっと触れた指が、鎖骨をかすめて止まる。
その瞬間、ふるえた。
身体の奥で、ずっと眠っていた快楽の記憶が…ぬるり、と目を覚ました感覚。
「……あっ、や……っ」
声にならない拒絶。
でも、脚が勝手に内へ閉じてしまうのは──
それが“恥ずかしい反応”だと、身体が知っていたから。
「言葉は拒んでるのに、君の体……嘘つけないんだね」
囁きが、耳の奥に落ちていく。
そのまま、唇が耳たぶを軽くふれ、
熱い吐息を耳の中へ、そっと流し込むように。
「……んぅっ……ぅ……っ」
ぴちゃ、と濡れた音が混ざる。
それは、耳の奥で響いた自分の吐息だった。
「……ねえ、もう思い出し始めてるでしょ?
どこに触れられると、どうなるか。……どこまで、蕩けるか」
視界が揺れて、指先が震える。
触れられていないはずの太ももの奥が、
じわじわと疼いて、熱く滲んでいた。
「わからない……のに……身体が……」
「君の中の“深いところ”が、先に欲しがってる」
そう言った彼の手が、今度は背中に回る。
服の上から、背骨をゆっくりなぞって──
それだけで、脚の間がキュッと締まった。
「……あぁ、ほら、感じてる」
「っ……ちが……う……」
「嘘。だって──」
そのまま、下唇にそっとキスを落とす。
さっきまで指先でなぞっていた場所。
今度は、彼の唇が触れた。
熱が直に流れ込んでくる。
思い出すより先に、快楽が染み込んでくる。
「……ほら。くちづけだけで、こんなに濡れてる」
確かに聞こえた、“くちゅ”という音。
誰のものか、もうわからない。
でもその音に、身体の奥がひくっと震えた。
私はもう、ただの“わたし”じゃなかった。
過去に、記憶に、快楽に──
どこまでも、深く溺れていく感覚しかなかった。
第五章:くちゅ、と鳴るたびに、奥が疼く
空気の温度が、ほんのわずか上がっただけなのに──
唇の内側から、じんわりと熱が滲み出していくのがわかった。
それは彼の吐息が混じった空気のせいか。
それとも……唇に残る、さっきのくちづけのせいか。
「……君の中、もう疼いてる」
低くて、熱を帯びた声。
ただの言葉なのに、そこに宿る“確信”が怖かった。
私ですら気づいていなかった体の奥を──
彼は、もう全部知っているみたいに。
「……っ、や、やめて……そんなの……っ」
「“そんなの”じゃなくて、これが君だよ」
言いながら、彼の指が太ももの内側へ。
服の上から、ゆっくりと撫でるように滑る。
じわ……っと、濡れていくのが自分でもわかる。
「……うそ……、私、そんな、濡れて……」
「ほんとだよ。だって──」
彼が耳元で囁いたその直後。
“くちゅ”
布越しに指が触れたその一点から、
とろけた音が、甘く響いた。
「っ……あっ、や……やだ……っ!」
脚が跳ねた。逃げようとしても、もう動けない。
震えた太ももが彼の指に押しつけるようになってしまう。
「……ねぇ、聞こえた?
今の音……君が出したんだよ」
また、指がゆっくり動く。
上下に、なぞるように、焦らすように──
“くちゅ…くちゅっ”
触れているのはまだ服の上。
それなのに、布が濡れて吸い付き、
音が肌の奥まで染み込んでくる。
「……ぁ、ぅ、っ……」
唇を噛んでも、止まらない。
喉の奥から熱があふれて、
声にならない声で、彼を求めてしまっている。
「ほら……“くちゅ”って、鳴るたびに」
「君の中、もっと疼いてくるでしょ?」
言葉が、音が、指先が──全部、快楽に変わっていく。
触れているのは表面だけなのに、
中の奥までかき回されているような錯覚。
「こんなに、熱くて、濡れて……
ねぇ、自分じゃわからない? どこまで蕩けてるか」
指が、下着の布をほんのわずか持ち上げた。
ほんの、それだけの仕草で。
「あぁ……っ」
声がこぼれた。反射的に、脚が開きかける。
でも、彼の手が太ももを押さえて、閉じさせる。
「だめ。まだ、入れない。まだ……触れてるだけ」
「……っ、そんなの……そんなの……っ」
「ねぇ──
触れてないのに、こんなに疼くのって……どうして…?」
触れてないのに、止まらない。
指先がくちゅ、と布の上をなぞるたびに──
奥の奥が、ぎゅうっと疼いて、熱をこらえきれなくなる。
記憶なんて関係なかった。
私の身体は、今この瞬間に暴かれて、
快楽だけで塗り替えられていく。
「君の中、もう……、僕に開いてるよ」
「……っ……ん、うぅ……っ」
脚の内側が痺れて、力が抜けていく。
どこも触れられていないのに、奥の一点が──
ずっと、くちゅ、くちゅと濡れて疼き続けていた。
第六章:知らない男に、感じさせられてる
「……ん、くっ……やっ……」
喉の奥から漏れる声が、もう自分のものとは思えなかった。 何も思い出せていないはずなのに──身体の奥だけが、先に暴かれていく。
脚の間、ぬるりと濡れた下着越しに指先が押し当てられている。 布越しなのに、そこが軋むように疼いて、勝手にきゅっと奥が締まるのがわかる。
「ねぇ……そんなに濡れてるのに、まだ“知らない”って言える?」
耳元に触れる吐息が熱い。
「っ……や……っ、やめ……っ、やだ……っ」
拒むように言葉を吐き出しても、その声に熱が混ざってしまう。 言葉と裏腹に、身体がびくびくと小さく跳ねて、刺激を受け入れてしまっていた。
「本当にやなの?」
「……っ、わかん、ない……っ……あぁっ……」
指が、下着の布地の縁をなぞる。 それだけでびくんと反応してしまう。 まるで、そこだけが“思い出している”みたいに。
「記憶がないのに……こんなに感じてるなんて」
「……君、誰にされてるかもわからないまま、こんなに……」
「ちが……やだ、そんな言い方……っ、あっ、んっ……んぁ……っ」
腰が逃げようとしても、押さえられたまま。 何も思い出せてない。
名前すら知らない男に、されている。
それなのに、感じている──それが、怖いほどにリアルだった。
「気持ちいいんでしょ……?奥が疼いてるの、わかるよ」
「……あっ……くっ、や、やだ……っ……やめてぇ……っ」
指先が濡れた布越しに、敏感な部分をゆっくり押し当てるように擦る。
くちゅ……ぬちゃ…… 濡れた音が混じっていくたびに、ヒロインの口からは浅く切れた息が漏れる。
「んぁ……っ、は……ぅ、んんっ……やぁ……っ」
脚の内側が震える。
自分ではもう、どこに力を入れて逃げたらいいのかわからない。
感じてしまっていることが、何よりも怖かった。
「ほら、ここ……指、入れてないのに……ずっと締めつけてる」
「……はぁっ……や……、そこ……ぅ……っ……」
快楽だけが、記憶の奥に刻まれていく。
彼の名前も、過去も、まだ思い出せていないのに──
カラダだけが、こんなにも知らない男を受け入れて、反応している。
「……君、すごく綺麗に啼くよね……」
「や……やめてぇ……っ、言わないで……ぁ……っ、んぅ……っ……」
喘ぎ声が、空間に溶ける。
知らない男に、感じさせられている。
その事実が、熱とともに私の奥を染め上げていった。
息を整えようとしても、喉がひゅっと詰まる。
呼吸を深く吸い込もうとしても、鼻腔の奥に彼の匂いが残っていて、胸が熱くなる。
指が離れたあとも、ぬるりとした熱が下着に残っていて、脚の奥がきゅっとひくついている。
「……どうして……知らない男に、こんな……っ」
思わずつぶやいた言葉が、自分の耳にすらいやらしく響いて、背筋がぞくりと震えた。
息を整えようとしても、喉がひゅっ、と詰まって……
まだ触れられていないはずなのに、まるで何度も擦られたかのように奥が、ひくひくと震えている。
声も、肌も、息遣いすらも、もう彼の熱で乱されていた。
第七章:カラダでしか、思い出せない
「……んっ、あっ……んぁ……っ」
吐息がくぐもって、熱を含んだ声になって漏れていく。
名前も知らない男の指が、脚の奥をなぞっている。 それだけで、太ももが勝手に震える。
「……もう、濡れすぎて……これ、下着の意味ある?」
囁きながら、彼の手が下腹部へ触れる。
布越しの指先が、ゆっくりと縁をたどっていく。
そのたびに、“くちゅ”と濡れた音が挟まる。
「……あぁっ、やっ……」
ビクッと跳ねた脚を、彼の手がそっと押さえる。 柔らかいけど逃げられない強さ。
指が、下着の隙間から入り込むように滑り込んでくる。
まだ“挿れて”ないのに、肌がぞわぞわして、奥まで疼く。
「……やだ、みないで……っ」
布がゆっくりずらされていく。
空気に晒された肌が、濡れて熱をもっていたのが自分でもわかる。
「……こんなに濡れて……ほんとに覚えてないの?」
彼の言葉に、息が止まりそうになる。
記憶には何もないのに、身体だけが反応している──
それが悔しいほど気持ちよかった。
「ぬるぬるしてる……触れてないのに、奥がひくって締めてくる……」
「やぁ……っ……言わないでぇ……っ……」
彼の指先が、素肌に直接触れた。 指の腹で、やさしく、なぞるように──
「……っ……ぅ、んっ……あっ、んぅ……っ……」
舌がこぼれそうなほど、甘く、力が抜けていく。 脚の奥が勝手に熱を持ってきゅっとなってしまう。
「気持ちいい?……ねぇ、誰にされてるかわからないのに、こんなに感じてるんだよ?」
「……わかんない、のに……っ、カラダが……勝手に……っ」
目をぎゅっと閉じても、耳元で囁く声が消えない。
「……身体だけで思い出していくんだね。……僕のことも、快楽も」
「ちが……う、でも……っ、あぁっ……んっ、んぅぅっ……」
彼の指先が、まだ浅い場所をなぞっているだけなのに、 脚がふるふると震えはじめる。
「……やっぱり、奥、疼いてるんだ……ここ……こんなに……」
「んあっ……、やぁ……あぁ……っ、んっ……ふぁ……っ……」
“くちゅ、くちゅっ……ぬちゃ……” 濡れた音が、指先と私の奥をつなぐように響く。
指が濡れた音を立てるたびに、私の声もどろりと蕩けてしまう。
肌が触れ合うたび、記憶の奥に熱が滲んでいく。
指が離れたあと、ふと頬を撫でた彼の手が、上着のボタンにかかる。
「……脱がせていい?」
「……えっ……や、あ……っ……でも……っ……」
戸惑いながら頷いたその瞬間── ボタンがひとつ、ゆっくりと外される。
そしてもうひとつ……もうひとつ……
ゆっくりと肌が晒されていくたび、吐息が重たくなっていく。
「君の肌……綺麗だね。……触れるたび、熱くなる」
「……あ……っ、やぁ……っ……だめ、そんなの……ぅ……」
服が肩から滑り落ちて、肘、手首へ。 そして、彼の手が背中に触れて──
「震えてる……脱がせただけなのに」
「……だって……そんなふうに……見られたら……っ……」
羞恥も快楽も、皮膚のすぐ下で震えている。
カラダだけが、記憶より先に、彼を少しずつ刻んでいく。
それがどうしようもないほど…、気持ちよかった。
──息を整えようとしても、胸の奥がじんわり疼いて、上手く吸い込めない。
指が離れたはずなのに、脚の間に熱が残っていて。
まばたきのたびに、彼の目線や指先の感触がフラッシュのように蘇る。
「……どうして……忘れてるのに……こんなに、震えてるの……」
小さく漏らしたその呟きさえ、空気を湿らせていく。
頬に触れた手の余熱が、じんわり滲む。
肌も、吐息も、身体の奥も……彼に触れられた場所すべてが、 まだ、くちゅ、と鳴るような気がしていた。
濡れた音が、耳の奥で何度も繰り返されて、忘れられないリズムになっていた。
第八章:熱の奥で、重なりかけて
「……んっ……ふぅ、ぁ……っ……」
甘く、溶けた声が喉の奥から漏れた。
服を脱がされ、素肌を晒したまま抱かれている。
背中にあたたかい掌。体温が、肌の奥まで染み込んでいく。
彼の唇が、鎖骨のあたりをなぞるように這っていくたびに、
ピクリと震える箇所がひとつずつ増えていった。
「……ここ……感じてる?」
「んっ……ぁ……ぅん……」
聞かれるたびに、頷くしかなかった。
思い出せない。なのに──身体が勝手に反応してしまう。
彼の指が、胸元へ。
手のひらで柔らかく包むように触れたあと、
親指がゆっくりと、先端をなぞった。
その動きは焦らすようでいて、確実に快楽の芯を捉えていて──
「ひくっ……やっ……ぁ、そこ……っ……」
きゅう、と胸の奥が疼いた。
こすられるたびに、先が硬くなっていくのが自分でもわかって──
羞恥と快楽が重なって、喉の奥から甘い吐息が漏れた。
そのまま、指先が円を描くようにゆっくりと先端をなぞりはじめる。
外側をなぞってから、中心へ向かってやさしく螺旋を描いていく。
「……あぁ……っ……ふっ……だめぇ……んっ……」
唇が胸に触れた瞬間、びくんと背中が跳ねる。
「んぁっ……だめ……っ……や……そこ……んっ……」
彼がゆっくり、唇を閉じるように乳首を含むと──
ちゅ、くちゅ、と濡れた音が、空気の中で色気を帯びて響いた。
舌先で転がされ、吸われるたびに、胸の奥から下腹部へじわじわと熱が伝っていく。
「っ……やぁっ……だめっ、そんな音……んぅっ……」
脚が震え、思わず腰を引こうとするけど、
背中を支える手が、そっと逃がさず支えてくる。
「逃げないで。……ここ、気持ちいいんでしょ?」
「違っ……でも……っ……あぁっ……」
舌が転がるたびに、下腹部が熱くなっていく。
そこを触れられてるわけじゃないのに、
胸元を愛撫されるだけで、脚の奥がひくつく。
「奥、疼いてる。触れてないのに、締めつけてくるよ」
「やっ……ぁっ……もう……っ……だめ……」
彼の唇が胸元を離れ、指先が再び下腹部へ。
濡れた音を残したまま、下着の奥へ滑り込んでいく。
「指、入れてもいい?」
耳元で囁かれた声が低くて、熱くて、意識を焼いていく。
「……っ……ぁ……い、い……よ……」
そう答えた自分の声が震えていた。
でも、拒めなかった。……ずっと、そこが疼いていたから。
彼の指先が、ゆっくりと入口をなぞる。
ぬるりと濡れた感触が指に絡みついて──
「……こんなに、溢れてる……ほんとに、僕のこと知らないの?」
「わかんない……でも……カラダが……勝手に……っ……」
「奥まで触れても、いい……?」
「っ……ぅん……っ……」
唇をかみしめて頷いた。
その瞬間──指が、ゆっくりと沈んでいく。
「んっ……あっ……ふっ……ぁ……っ……」
挿れられてる。
まだ浅いのに、熱が奥まで届いて、息が詰まりそうになる。
身体が、彼を“受け入れてしまった”感覚に震えていた。
奥でくちゅ、と鳴った音が、脳まで痺れさせた。
「……震えてる……かわいい……」
「やだ……そんなの……言わないで……っ……」
でも、本当は──
その言葉すら、もっと欲しくなってしまっていた。
第九章:快楽が、記憶の奥を開いていく
「……んっ……ふ、ぁ……あ……っ」
私の吐息が甘く震えて、彼の耳をくすぐった。 重ねた肌の間に滲んだ熱が、ゆっくりと奥へ沈んでいく。
「……怖い?」
問いかけに、私は小さく首を振った。 でも、目は潤んだままで、唇も小さく震えていた。
「……わからないの……でも、いやじゃない……っ」
その声は震えていたけれど、確かに“欲しがっていた”。
彼の指が、私の脚の奥をなぞる。
愛撫されたばかりの胸元は、汗ばんでいて敏感に震えている。
「……ここ……ずっと濡れてる……熱いよ」
囁く声が低くて、体温に溶けるようだった。 指先が、私の奥をそっとなぞる。
すでにとろとろに濡れているのが、ふたりにはっきりわかった。
「入れるよ……ゆっくり、ね」
私はぎゅっと目を閉じ、顔を横に背ける。
けれど、腰は小さく震えて、逃げるどころか──彼の身体を迎え入れようとしていた。
「んっ……あっ、くっ……ぅあ……っ」
先端が、奥へ沈んでいく。 最初の圧迫感に眉を寄せる。 それでも、拒まない。
「……入ってる……っ、や……でも……ぁっ……」
「力抜いて……ほら、奥が……迎えてくれてる」
「っ……んぁっ……あっ……ああっ……」
深く、ゆっくりと沈んでいくたびに、私の喉が熱を震わせる。
「……やだ……なんで……奥、こんなに……っ……気持ち……いい……の……っ……」
「記憶、ないんだろ……?」
「うん……っ、わかんない……でも……身体が……っ……」
彼の腰が止まり、奥で脈打つような熱を押し当てたまま、囁いた。
「じゃあ……カラダが覚えてたんだよ。俺のこと──全部」
「……れ……ん……?」
小さく、呟くように名前がこぼれた。 口に出した覚えもないその名を、私はなぜか知っていた。
「あっ……ああっ……なんで……っ……蓮……っ……」
熱が、奥からじんじんと滲んでいく。
重なったまま、腰を揺らすたびにくちゅ、ぬちゅっ……と淫らな音が濡れた空間に広がっていく。
「やっ……だめぇ……っ、そんな音……っ……んぁっ……」
「声、我慢しないで……もっと……聞かせて」
「いやぁ……っ、声……勝手に……っ、出ちゃ……っ……ああっ……っ」
奥まで満たされる感覚に、理性がすり減っていく。
記憶はまだ空白のままなのに、身体の奥だけが── 確かに、彼を思い出していた。
「もっと奥……欲しいでしょ……? 梨乃」
「っ……は、い……欲しい……蓮の……奥まで……っ……」
私…梨乃という名前と共に、快楽が、扉を叩いていた。
開いてはいけないはずの記憶の扉が、今── 彼の熱で、ゆっくりと軋みを上げて開いていく。
「……っ……あぁ……っ……れ……ん……っ……!」
──重なったままの身体に、ひとつ、ひとつ、余韻が降ってくる。
肌に残った熱、耳奥に残る囁き声、奥で響いた濡れた音──
どれもが現実感をもって、梨乃の内側に染み込んでいた。
思い出せないのに、確かに覚えている。
カラダが先に知っていた快楽が、名前を、ぬくもりを、奥に焼きつけていく。
彼に包まれながら、梨乃はもう一度──ゆっくりと、蓮という名を、喉の奥で転がした。
「……れん……っ……」
その声だけが、甘く、震えていた。
第十章:深く重ねるたび、淫らにこぼれていく
「んっ……ぅあっ……はぁっ……っ」
蓮の動きが、奥をゆっくり押し広げていくたびに、梨乃の声が熱く揺れる。
「奥……届いてる……っ……あっ……んぁ……っ」
彼の熱が、ひと突きごとにずぶずぶと奥へ沈んでいく。 それだけで、梨乃の全身が甘く痺れていくようだった。
「……あぁ……っ、やぁ……そこ……っ、奥……だめ……っ……」
「だめって言いながら、締めつけてきてるよ……」
囁きが耳元で低く響いて、ぞくりと背筋を伝う。
「カラダが、俺を欲しがってる……奥の奥まで、俺で満たされたいって……」
「ちが……っ、やっ……そんなの……っ……んぁっ……っ」
腰が引こうとするたびに、蓮の腕がそれを包むように抱き留める。
逃げられない、でも──逃げたくない。
「……もっと、奥まで……感じたいんだろ……?」
「っ……は……い……っ……欲しい……もっと……蓮を……」
蓮の腰が打ち込まれるたびに、くちゅっ、ぬちゅっ、と濡れた音が混ざっていく。 その音が、熱を持った空間を淫らに彩っていく。
「んんっ……っ、あっ……だめぇ……そんな……音……ぁ……っ……」
「でも、こんなに……濡れて……可愛い声出して……」
彼の唇が、首筋に触れたかと思えば、鎖骨へ、胸元へ──
キスと舌が滑るたび、梨乃の体温がさらに上がっていく。
「ふぁっ……あっ、んんっ……やぁ……っ……」
胸の先端を舌で転がされながら、蓮の熱は奥でゆっくりと暴れはじめる。
一度沈んでから、角度を変えて── 奥をこすり上げるように突かれた瞬間、梨乃の腰が跳ねた。
「あっ……そこ……っ、やぁ……っ、また……あぁっ……」
「ここが……気持ちいいんだな……梨乃の一番感じるとこ……」
「やぁ……言わないで……っ……恥ずかしい……っ……」
「でも、嬉しいだろ……? 俺しか知らない、君の奥……」
「……うん……っ、嬉しい……蓮に……見つけてもらえて……っ……」
涙混じりの吐息がこぼれる。
熱の奥で重なって、快楽が記憶をじわじわと溶かしていく。
──彼の腕に抱かれながら、梨乃は確かに思った。
蓮の中にいるこの感覚が、何よりも「思い出」なのだと。
「……奥、いっぱい……当たって……蓮……っ……好き……っ……」
「俺も……梨乃……。気持ちよくなってる顔、ほんとに綺麗だよ……」
唇を重ねた瞬間、奥を深く突かれて── 快楽が弾けた。
「んんっ……ああぁっ……あぁ……っ……っ……」
脚が震えて、視界が揺れて、 全身がとろけるように蓮に溶かされていった。
第十一章:快楽に溺れて、意識が遠のくまで
「っ……あっ、ああっ……っ、も、もう……だめ……っ……♡」
梨乃の声が、涙まじりに掠れていく。
蓮の腰が容赦なく奥を突くたび、濡れた音がくちゅっ、ぬちゅっ……と響いて──
それに重なるように、甘く濡れた喘ぎがひたすら空間を揺らしていた。
「っ……あぁ……奥……擦れて……蓮っ……も、もう……っ……っ♡」
「ほら、奥の一番気持ちいいところ、ぐりぐりされてる……どう? もっと欲しいって、カラダが言ってる」
「やぁ……ちがっ……でもっ……っ……うぅっ……あっ、あっ……!」
腰を突き上げる角度が変わるたびに、梨乃の脚が跳ねて、喉が詰まるほど甘く震える。
敏感な箇所を何度も擦られ、奥で暴かれて──すでに何度イかされたのかわからない。
「もう数えられないくらい、イってるのに……また締めつけてきてる。どれだけ欲しがりなんだ、梨乃……?」
「やっ……だめ……っ、れん……そんなの……っ……ああっ……」
「このまま奥で擦り切れるまで突いて、声も思考も、全部蕩けるまで乱されたいんだろ……?」
「……っんん……そんな……っ……でも……止まんない……っ……!」
「いい子……俺だけで、壊されて……俺のカタチ、奥で全部覚えて……」
突き上げがさらに深く激しくなり、ぬちゅっ、ずちゅっ、と生々しく濡れた音が部屋中に響く。
「やっ……んんっ……そんな激しく……っ……ああっ……おかしく……なっちゃう……っ♡」
「いいよ……なっちゃえ。俺の中で、蕩けていい……」
唇を重ねられた瞬間、舌が絡み、喉奥まで熱が流れ込む。
奥を突かれながらのキスに、声も漏れず、全身がビクビクと震えていた。
「……もう一度、イかせて……最後まで、感じて……梨乃……」
「っ……ぁ……ぅん……いって……っ、いかせて……蓮……っ……」
最後のひと突きが、奥の奥に当たった。
「──っ、ああっ……♡ あっ……っ……っ……んんっ……!」
身体が跳ねて、目が霞んで、意識の端が、ふっと揺れる。
「……っ……あ……れ……ん……」
気付けば、蓮の腕の中で崩れ落ちるように倒れていた。
熱い吐息だけが、喉の奥で名残のように震えて、
そのまま、意識がふっと──遠のいていった。
第十二章:目覚めた場所に、彼はいない
「……ん、っ……ぁ……」
どこか遠くで、水の滴る音がした。
ぼんやりと意識が浮かんできて、重たい瞼がゆっくりと開く。
天井。白く、静か。 見慣れない天井だった。
「……ここ……どこ……?」
梨乃はゆっくりと体を起こした。 シーツが柔らかく、肌にぴたりとまとわりついている。
身体の奥が、まだ熱を引きずっていて──じんわりと疼いていた。
脚の間に残る違和感。 肌に残る、誰かの手の感触。 首元、胸元、内腿に触れた熱の痕跡。
「……っ……蓮……?」
名前を呼ぶ声が、部屋に吸い込まれていく。 返事は、ない。
辺りを見回しても、そこに彼の姿はなかった。
淡い光が差し込む室内。 窓はあるのに、外の景色はぼやけて見えない。
まるで、夢の中の世界のようだった。
「……夢……だったの……?」
でも、身体の中だけが、しっかりと覚えている。
蓮に深く満たされた熱、 快楽で震えた奥の感触、 耳元で囁かれた声、 突き上げられた瞬間の痺れ。
視線を落とすと、枕元に一枚の紙が置かれていた。 折り目もついていない白い便箋。
指でそっと持ち上げると、そこには短く──けれど見慣れた文字で、こう書かれていた。
『また、会えるよ。』
「……っ……蓮……」
喉が乾いている。 でもそれより、カラダの奥が熱い。
名前を呼ばれたときの鼓動、 何度も絶頂を迎えて壊れかけた感覚、 あの夜、何が現実で、何が夢なのか、もうわからなかった。
「……蓮……っ、どこ……っ……」
その場に崩れるように座り込んだ。 太腿を寄せても、奥の疼きは収まらない。
まるで彼の痕跡が、そこにまだ残っているみたいだった。
あの余韻が、静寂へ溶けていく。
この夜の余韻を、もう少しだけ深く味わいたい方へ。


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