密室セラピーⅡ ――沈黙が、欲を濡らす

 

 

沈黙の奥で濡れる、二人だけの秘密。 

 

前回のお話

 

 

#翌朝、疼く記憶 

──窓の外では、何気ない朝が始まっている。  

ひよりもいつものように顔を洗い、食卓につく。  

けれど、コップを持つ手に一瞬だけ走る微かな震え――  

昨夜、強く握られた指の跡が、皮膚の下でまだ疼いている気がした。  

(昨日の、あれ……夢じゃないよね……)  

テレビからは天気予報。 冷蔵庫のドアを開ける音。  

“普通”の日常に紛れて、ふとした拍子に  

(……あの時の声、思い出しちゃう…)  

呼吸が、唐突に浅くなる。  

歩くたび、太ももの内側がじわりと熱を帯びる。  

「あ……やば……」  

思わずため息が漏れる。  

“人に触れられるのが怖い”  

“男性は特に苦手”  

ずっとそんな風に思ってきたのに、  

あの低く囁く声と、指先だけはどうしても思い出してしまう。  

シャワーを浴びても、その火照りはなかなか消えてくれない。  

──職場でも、書類を手渡される指先がかすかに震えた。  

デスクの椅子に座るたび、  

(変じゃない?私……)  

頭では否定したくても、カラダが言うことを聞かない。   

 

#友人のアドバイス 

昼休み、スマホを握る手が何度も友人のLINEアイコンに触れる。  

結局――  

「ねぇ、ちょっとだけ話、聞いてくれない?」  

画面の向こうの友人、奈央(なお)は、察しのいいタイプ。  

『ん?どうしたの?昨日サロン行ったって言ってたよね?』  

「うん……。なんかさ……ちょっと変なんだ、私……」  

『ふーん?それって“女として”ってことでしょ?』  

「ちが……いや、そういうのも、あるかも……」  

頬が自然に熱くなる 。 

 「昨日、担当の先生に……触れられたときのことが、まだ抜けないっていうか……」  

『あぁ~~、それ、めちゃくちゃ良かったんじゃんw』  

「奈央……やっぱり無理かもって思った瞬間もあったんだよ」  

『怖かった?』  

「最初はほんとに……。でも、彼の声が低くて落ち着いてて……触られるうちに、どんどん……変な感じになって」  

 『それって、怖かった気持ちよりも、気持ちよかった方が勝っちゃったってこと?』  

 「……うん。でも、自分がそんな風になるなんて思ってなかったから、今もなんか信じられない」  

 『ってさ、本当に嫌な相手なら絶対無理でしょ。 だったらたまには“荒療治”もアリなんじゃない?』  

 『それ、ガチで効いてるやつじゃん。  

で、また会いたくなってる?』  

「……うん」  

「また連絡、してもいいかな……?」  

『いいに決まってんじゃん。  

やばい時は我慢しないでさ、相手もプロなんだし。  

ひより、昔から男の人苦手だもんね。  

でも、だからこそ 逆に“いい意味で壊される”くらいの体験も必要なんじゃない?  

気になるなら、もう一回だけでも行ってみたらいいよ』  

「……そんな簡単に言わないでよ。  

でも、正直…あの声がまだ耳に残ってて…困ってる」  

『じゃあ、尚更行った方がいいやつじゃん。“自分の心が少しだけ欲しがってる”なら…ちゃんと向き合ってみてもいいと思う』  

「……うん。ありがとう、奈央」  

ひよりは、胸の奥で熱く疼く感覚を抑えきれず、 スマホを握りしめて、  

あの“慶”のLINEトーク画面を開く。  

(……送る?本当に、また……)  

数秒の沈黙ののち、  

「…また予約ってできますか?」  

震える指で、短いメッセージを打ち込む。  

返事は、想像より早かった。  

『もちろん、大歓迎ですよ。  

水沢さんのご都合に合わせますので、いつでもご連絡ください。  

──一ノ瀬 慶』  

画面に映る文字を見て、  

ひよりの心臓がドクンと跳ねる。  

(また、会える……。でも――)  

指先がまだ微かに震えていた。  

 

 

※この余韻が、少しでも残ったなら

ひとりの夜に向けたページ、まとめています。

 

 

#再び、扉の向こうへ 

あれから数日たっても、熱はなかなか冷めなかった。  

奈央からのLINEも後押しになって、  

ついに、ひよりはもう一度あのサロンの前に立っていた。  

――扉の向こう、思い出すだけで心臓が高鳴る。  

「……やっぱり私、どうかしてる」  

奈央からは直前まで軽いノリで背中を押されていた。  

《ビビってもOK!でも“いい意味で壊されて”来いってw  

終わったらちゃんと報告よろしく♡》  

深呼吸して、静かにドアを開ける。  

 控えめな灯りに照らされた室内。  

中は静かで、前回と同じアロマの香りが空間を満たしていた。  

ふと振り返ると、彼が――一ノ瀬 慶が、 大人びた余裕と、どこか冷ややかな色気をまとって現れる。  

落ち着いた黒髪は少し無造作で、細身のフレーム眼鏡越しに覗く目は、優しさと支配を絶妙に混ぜたような深さ。  

「……こんにちは。おかえりなさい、水沢さん」  

 低くて、落ち着いた声――黒いシャツに身を包んだ彼が、ふと微笑んで手招きする。  

その腕、指先、首筋に浮かぶ血管さえ、どこか色気を帯びて見えてしまう。  

「…緊張してる?」  

優しく問いかけられても、目を合わせられない。  

「……ちょっとだけ」  

「大丈夫、今日は“無理”はさせないよ」  

どこか茶化すような口調なのに、言葉の端々に“優しさ”が滲んでいる。  

そのまま静かな廊下を抜けて個室へ。  

ほんのり漂う柑橘系のアロマ。  

淡い光に照らされたベッドの横で、慶がそっと黒いタオルを広げる。  

「この前より、表情が柔らかくなったね」  

慶の指が、ひよりの髪に触れる。  

一瞬ビクッと身を強張らせてしまい、思わず苦笑いが零れる。  

「ごめんなさい、実は…男の人はまだちょっと…怖いんです」  

「……そっか」  

一瞬だけ、慶の表情が翳る。  

だけど、すぐに柔らかい声で続ける。  

「でもさ――“誰でも”怖いわけじゃないんだろ?」  

「……」  

「…僕じゃなきゃダメ、って思わせてみせるよ」  

冗談めかしたその言葉が、やけに胸に響く。  

着替えを済ませ、ベッドに横になると、慶がさりげなく毛布をかけてくれる。  

「じゃあ、始めるね――力を抜いて」  

優しいはずの手が、肌にふれた瞬間。  

そのぬくもりが、“普通”の男じゃないと教えてくれる。  

指先がゆっくり首筋から肩、鎖骨、腕へ。  

敏感な部分をなぞるたび、ゾクッとした緊張が、やがて安堵に変わっていく。  

「大丈夫、まずは優しくするから」  

「……うん」  

「もし嫌だったら、いつでも止める。  

でも……君が望むなら――」  

耳元に熱い吐息を落とす。  

「“ここ”でしか味わえないもの、全部あげるよ」  

――この人になら、私の心まで預けてもいいのかも――  

ひよりはふと、そんな衝動を覚えてしまう。  

 

 

#優しさと支配の手 

ベッドに横たわったひよりの肩に、慶の掌が静かに触れる。  

まずは服の上から、やさしく円を描くように――  

「呼吸、少し浅くなってるよ」  

囁きながら、慶はひよりの耳元に吐息を落とす。  

微かな羽音のようなフェザータッチで、首筋から鎖骨、胸の際を撫でていく。  

「……くすぐったい、です……」  

「この感覚、好きでしょ?」  

唇が耳たぶをかすめる。ひよりの反応を楽しむように、さらにゆっくりと指先が滑る。  

服の隙間から手を忍ばせ、 布越しに優しくなぞっていた指が、少しずつ素肌に触れていく――  

背中、肩甲骨、そして腰へ。  

緊張と快感が混じった吐息がこぼれる。  

「慶さんの手…、すごく熱い…」  

「…それは、君が特別だから」  

耳元で、ため息混じりに囁かれる。  

「君の身体にしか…こんなふうに触れたくならない…」  

甘い毒みたいな言葉が、奥深くまで沁みていく。  

指がわざとゆっくり、腰骨をなぞる。  

フェザータッチで焦らしながら、 下腹部に“指の先”だけを置いてみせる。  

「……もっと奥まで知りたくなってきた」  

「……っ」  

「今だけでもいい。君の気持ちまで、僕に委ねてくれる?」  

恥ずかしさに俯いたひよりを、慶がやさしく顎ごと持ち上げる。  

「まだ終わらせるつもりないから――  

 今夜は……とことん、僕だけのものにしたい」  

肌の上を指がゆっくり這う。  

焦らしと煽りの波を重ねながら、  

この先の“さらに深い快感”を予感させて――  

「僕に全部、委ねてごらん。  

 ……逃げることなんて、もうできないよ」  

ひよりはその声に、心も身体も、  

どんどん絡め取られていくのだった――  

慶の手が、ひよりの髪をそっとかき上げる。  

「ひよりさん、綺麗なうなじだね。白くて透き通っていて…、吸い込まれそうだ」  

囁きながら、うなじにやわらかなキス。  

唇はそのまま、肩から鎖骨へと、 まるで一筆ずつ描くように――  

肌に花びらが触れるようなリップで、 ゆっくり、ひよりの全身をなぞっていく。  

「……んっ…慶さん……、恥ずかしい、です……」  

頬を染めて身じろぐひよりの耳に、 慶がそっと囁く。  

「 ……君だけが特別だって、何度でも教えてあげる」  

指が肩先から腕へ、手首、指先までやさしく辿る。  

掌に口づけを落としながら、 指の腹で脈の鼓動を感じて――  

「こんなに高鳴ってる」  

わざと呟き、ひよりの心まで見透かすように微笑む。  

服の裾をめくり、素肌を確かめる。  

お腹、脇腹、太もも…… どこを触れてもひよりの反応を逃さず、 熱を重ねていく。  

「……何か、怖いことがあった?」  

突然、慶が小さな声で尋ねる。  

「君の身体、時々…すごく強張るんだ」  

ひよりはドキリとして、息を詰める。  

「無理しなくていい。でも、 少しずつ“僕にだけ”に教えてくれればいいから」  

優しく、でも逃げ場のない言葉で包み込む。  

唇が太ももまで降りて、 そこにもゆっくりとリップの跡を残していく。  

「このまま…君の奥まで、欲しくなってしまいそうだ」  

低く甘い声が、ひよりの奥まで響く。  

慶はひよりの目を見つめ、  

「何度でも“好き”って言わせたくなる。 本当に、君だけ特別なんだ」  

唇を重ねながら、 静かに――でも情熱的に、ひよりの全身を愛していく。 

 

 

#触れられる悦びと戸惑い 

慶の唇が、ひよりの足首からふくらはぎ、膝裏へと、丁寧に愛撫を重ねていく。  

まるで彼だけの時間が流れているみたいに、焦らすリズムはどこまでもゆっくり。  

「……こんな風に、誰かに触れられるの、久しぶり?」  

耳元で静かに囁きながら、唇が素肌の温度を確かめる。  

ひよりの胸元に伸びた指は、服の布地越しに優しくなぞり、 たまに爪先でくすぐるように円を描く。  

「……本当は、もう少し強くして欲しいって、顔に出てるよ」  

冗談めかして笑いながら、ひよりの目をじっと見つめる慶。  

ボタンをひとつ外すごとに、肌に触れる空気が増していく。  

そして、ブラウスの隙間から露わになった柔らかなラインを、 ゆっくりと唇でなぞっていく。  

ひよりの反応を確かめるように、 谷間をくすぐる吐息とキスを落としながら、  

「まだ力が入ってる……。でも、任せて」  

そのまま腰のあたりまで両手を滑らせて、 太ももを包むように撫で上げる。  

膝でそっと脚を開かせながら、慶の瞳がやさしく揺れる。  

「……怖くなったらすぐ言って。 でも今は、僕にだけは甘えて欲しいんだ」  

ひよりの鼓動が速くなり、無意識に息が浅くなる。  

けれど、その手も唇も優しくて、気づけばもう、抗う気持ちはほどけていた。  

「ほら、もっと…そのまま感じて。  

僕が少しずつ…ゆっくり、君の中まで入り込むから」   

ゆっくりと身体中を舐めるように愛撫しながら、慶はさりげなく、特別な距離をひよりだけに与えていく。  

慶の指が、ゆっくりと太ももを撫で上げるたび、 ひよりの呼吸は自然と浅く、熱っぽくなっていく。  

最初はどこか緊張で強張っていた身体が、 その優しさに、少しずつ緩んでいくのが自分でも分かる。  

――こんなふうに誰かに触れられるのは、 ずっと…怖いだけだと思ってたのに。  

慶が「僕にだけは甘えて」と囁いた瞬間、 ひよりの胸の奥が、ふいに甘く痺れた。  

怖い気持ちも、心のどこかで求めていた“安心”も、 ぜんぶ彼の手のひらで溶かされていくみたいだった。  

「……やっ、なんか…変な感じ……」  

ひよりが小さく呟くと、慶は微笑みながら、  

「変じゃないよ。大丈夫」  

と、唇をお腹のあたりに落とす。  

くすぐったいような、熱が灯るような、 未知の感覚が全身を駆け巡る。  

――こんなに丁寧に、 大事に扱われる時って、どんな顔をしたらいいんだろう…。  

ブラウスが肩から滑り落ちていく。  

素肌の上を這う唇と指先が、 ひよりの奥の奥にまで、じわじわと火を点けていく。  

彼と目が合った瞬間、 恥ずかしさに思わず目を逸らすけど、  

慶の手がそっと顎を支えて、視線を絡めて離さない。  

「ひより…、今は僕だけを見て?」  

彼の優しい強引さに、 ひよりの心はふわふわとほどけて、 抗うどころか、ただ素直に委ねてしまいたくなる。  

――どうしてこんなに、  

この人の言葉や手に逆らえないんだろう。  

触れられるたび、 怖さよりも、もっと深い安心に包まれていく。  

ひよりの瞳が潤んで、 身体の奥から湧き上がるものに戸惑いながらも、  

そのまま、慶にすべてを預け始めていった。  

慶の手が、じっくりと背中を撫でながら、ゆっくりと身体を横たえさせる。  

シーツに沈んでいく感覚と、彼の温度がじわじわとひよりを包み込む。  

指先は肩甲骨をなぞり、鎖骨、首筋へとゆっくりと移動していく。  

その軌跡に沿って唇がそっと触れ、 時折、熱い吐息が肌に絡みつく。  

「……っ…、あっ…そんなふうに触れられたら……」  

ひよりの声はかすれて、どこか甘く震えていた。  

「どうされたい?」  

慶の低く艶やかな声が耳に落ちる。  

ひよりは答えられずに小さく首を振る。  

だけど、慶はもう一度囁く――  

「素直に言ってごらん、ひより。僕は君の願望、受け止めるから」  

迷いも羞恥も、じわじわと蕩けていく。  

太ももの内側に触れる指先が、わずかに震えるひよりの反応を確かめながら、  

下着越しにゆっくりと熱を加えていく。  

もう、隠していられない。  

「……もっと、触って……ほしい……」  

掠れた声がシーツに沈む。  

慶の動きが少しだけ強くなり、 ひよりの足をやさしく開いて、  

肌に、呼吸に、たっぷりと余韻を残しながら愛撫していく。  

膝裏や内腿、敏感な箇所をなぞるたび、 ひよりの身体はビクリと震えて、  

自分の意思とは無関係に、熱がどんどん高まっていく。  

「……ひより、君のカラダが…もう僕に反応してる」  

慶は唇で耳たぶをそっと挟む。  

「恥ずかしがらなくていいよ。もっと感じて、教えて?」  

ひよりは頷くだけで精一杯だった。  

慶の手つきが下着の上から愛撫を続けると、 自分でも信じられないほど、身体が敏感になっているのがわかった。  

「んっ…ぁっ……だめ……そんなの……」  

小さな声で懇願しても、慶の手は止まらない。  

「本当は、もっと…してほしいんじゃないの?」  

慶の囁きに、心の奥で何かがとろけていく。  

優しさと強引さ、そのどちらもがひよりの心を溶かし、  

彼女はもう、どこまでも任せてしまいたくなっていく――。  

慶の手が、ひよりの下着の端をゆっくりと指先でなぞる。その熱が肌に伝わるたび、期待と恥ずかしさが混じって呼吸が浅くなる。  

「ねえ、こんなに震えてる。どこを触ってほしいのか…、もう隠せてないよ?」  

慶の唇が、ひよりの耳に触れるたびにゾクリと背筋が震える。  

「……だって……慶さんが、意地悪するから……」  

恥じらいの中でぽつりと答えるひよりの声を、慶がふっと笑う。  

「意地悪……? ひよりが素直に気持ちを見せてくれるのが、たまらなく可愛いだけ」  

そう囁くと、指先が下着越しに敏感な部分をじっくりと押し撫でる。  

「こんなふうに触れられて……どんな風に感じてる?」  

ひよりは、どう答えていいかわからないまま、脚をわずかに揺らす。  

呼吸も声も、どんどん熱っぽくなっていく。  

「ねえ、もっと聞かせてよ。どこが気持ちいいのか、どんなふうにしてほしいのか……ちゃんと、声で教えて」  

唇で首筋をなぞられ、耳の後ろに熱い吐息が落ちる。  

指先が下着の端をずらして、柔らかな肌を露わにする。  

「ほら……もう、ここ、濡れてる。僕のせい?」  

「……やっ…恥ずかしい…、そんなに…触るから……」  

途切れ途切れの声でやっと答えたひよりに、慶は満足そうに囁く。  

「そうか。じゃあ、もっと夢中にさせて……いい?」  

ひよりの心臓が跳ねる。  

「……ん……」  

次の瞬間、慶の指がゆっくりとその場所をなぞり、  

肌がひりつくような感覚と共に、ひよりの身体はじわじわと溶かされていく。  

「この反応……本当に素直だね。恥ずかしい? それとも、嬉しい?」  

「…何も言えない?このまま、やめて欲しい?」 

「……あぁぁっ…待って…っ……どっちも…………」  

「じゃあ、もっと感じさせてあげる。君が欲しいって思う場所、僕がちゃんと探してあげる」  

囁きと吐息、優しさの中に潜む強引さ――  

ひよりの理性はもう、とろとろに甘く溶け始めていく。  

 

 

#音に溺れる沈黙 

 慶の指先が、ひよりの素肌をじわりとたどる。  

言葉はもういらなかった。ただ、沈黙の間に息づかいと濡れた音が静かに響く。  

「……どうしたの? 急に静かになったね」  

低く囁く慶の声さえ、ひよりには鼓動のノイズみたいに胸に響く。  

唇を噛みしめて、感じていることをどうしても言葉にできない。  

「……いっ…いえ…ない……」  

震える声でぽつりとこぼすと、慶が微笑みながら耳元に唇を寄せる。  

「……言葉にしなくていい。今の君の沈黙が、吐息が…伝えてくるから」  

指先がゆっくりと、ひよりの秘めた場所を優しく撫でる。  

静寂の中、わずかに濡れた音が空気を震わせる。  

ひよりはその音に、自分でもどうしようもない欲が増していくのを感じていた。  

「……こんなに濡れて……欲しがってるの、バレてるよ」  

返せる言葉が見つからなくて、ただ息を呑む。  

沈黙の中で、身体だけがどんどん素直になっていく。  

指先がリズムを刻むたび、思わず喉の奥から甘い吐息が漏れる。  

「ほら……この沈黙が、一番いやらしい。君の乱れた吐息が……声よりもずっと、僕を煽る」  

ひよりは、もう頷くことしかできない。  

沈黙が破れた瞬間、溶けてしまいそうなほど熱くて――  

“声にならない欲望”が、ふたりの間に静かに満ちていく。  

慶の指先が、ひよりの秘めた場所をそっとなぞる。  

静寂のなか、わずかな水音が空気を湿らせていく。  

「……声、我慢してるの?」  

囁きが、耳朶に熱く絡みつく。 ひよりは唇を噛み、首を小さく振る。  

恥ずかしさと快感が絡み合い、喉の奥で言葉にならない声が震えていた。  

「遠慮しなくていいよ。……君の声、もっと聴かせて」  

意地悪そうに、指がさらに奥へと進んでいく。  

敏感な場所を撫で回されて、ひよりはついに耐えきれなくなる。  

「…んっ……あっ……やっ……ぁ……!」  

息が震え、吐息が溢れる。  

それだけで、慶の動きがさらに強くなる。  

「そう……いい子。  

 もっと素直になって……。君のいやらしい喘ぎ声…もっと聞かせて」  

ひよりは、自分の声がどんどん大きくなるのを止められない。  

耳元に口を寄せた慶が、そのまま唇を優しく塞ぐ。  

そして、また離して――  

「……ほら、隠さないで。  君の欲しがる声、……もっと僕に聴かせて?」  

「やっ……だめっ……ぁ……はぁっ……あぁん……っ……!」  

身を震わせ、快感に呑み込まれていく。  

沈黙が破れたその瞬間、ひよりの身体は慶の腕の中でとろけていた。  

 

 

#僕だけの特別 

──どうしてだろう。  

たくさんの女性の身体を触れてきたはずなのに、彼女の肌だけはまるで別物だ。  

初めて指先が沈んだ瞬間から、熱に包まれて、自分の鼓動まで速くなっていく。  

ひよりの身体は、僕が動かすたびに敏感に跳ねて、  

他の誰よりも純粋に、反応を刻みつけてくる。  

「……こんなに濡らして……」  

指を少し動かすだけで、“くちゅ、くちゅ……”と淫らな音が部屋に響く。  

溢れた雫が手のひらまで伝って、指を絡めとるたびに、  

ひよりの中が僕を求めて締めつけてくる。  

“音までこんなに……誰にも見せたことのない顔、僕だけに預けてるんだ”  

自覚した瞬間、抑えきれない独占欲が湧き上がる。  

「他の誰にも、こんな音……聴かせたことないよね?」  

わざと耳元で囁くと、ひよりの呼吸が乱れていく。  

“この反応も、蕩ける声も、体温も…僕だけのものだ”  

彼女を焦らすほどに、音は濃密になって部屋の中に広がっていく。  

もう誰にも渡したくない――  

ひよりだけが、僕をここまで欲情させる唯一の存在だった。  

……駄目だ。  

このままじゃ、抱き潰してしまいそうになる。  

ひよりの身体が熱に溺れて、僕の指先を締めつけるたび、  

頭の中は理性の刃先が軋むほど軋んでいく。  

「……もう、限界……」  

彼女の瞳が潤んで、声にならない吐息と熱が、  

僕の耳元をくすぐってくる。  

自分でも信じられないくらい、衝動が暴れ出しそうになる。  

それでも、ここで全部を奪ってしまったら、  

彼女の心ごと壊してしまいそうで――  

何度も、何度も、奥に潜む欲望を押し殺す。  

「ひより……」  

掠れた声で名前を呼び、汗ばむ額に唇を落とす。  

ゆっくりと指を引き抜けば、濡れた音が名残惜しそうに響いた。  

「……君を欲しがってるのは、僕の方なのに」  

喉の奥で呻きながら、 抱きしめる腕に力がこもる。  

唇が触れるだけで、堪えきれない熱が滲み出す。  

「今日は――ここまでだね」  

そう告げるのがやっとだった。 心も身体も、もう限界なのに。  

彼女を本当に壊してしまう一歩手前で、 ギリギリの線を引く。  

“君を誰にも渡したくない。  

でも、君の心まで全部欲しいから、今はまだ……。“  

自分の理性を信じながら、ひよりをそっと抱き寄せた。  

 

 

#ふたり、揺れる余韻 

外の空気は冷たくて、サロンを出た瞬間、熱っぽい頬を指先で触れた。  

(…きっと、私がまだ慣れてないからだ。  

慶さんは、あくまでセラピストとして丁寧にしてくれただけ。  

こんな風に期待しちゃうのは、きっと私だけだ――)  

ひとり言い聞かせるように歩きながらも、  

玄関先まで見送りに出てきた慶さんの表情が、どこかぼんやりして見えた。  

「今日は、ありがとうございました…」  

自分でも不自然に思えるくらい、よそよそしい声で言うと  

「…また、会える日を、待ってる」  

低く抑えた声が、少しだけ揺れていたように感じた。  

背中に残る視線を気にしながら、 ひよりは、乱れた呼吸を整えようと深呼吸した。  

(いつもと、何か…違った。 私のせい?それとも…)  

心の奥に残った熱と戸惑いを抱えたまま、  

ひよりは静かな夜道を家へと歩き出す。  

 

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この余韻のまま、もう少しだけ…

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