密室の扉が開く夜(プロローグ)
(どうしよう……消えちゃう……っ)
鏡の前に立つひよりは、自分の首筋から胸元にかけて薄く残る赤い痕を、祈るような気持ちでなぞった。
あの日、彼につけられた、所有印のようなキスマーク。
服の下に隠されたその痕を見るたびに、彼に抱え込まれ、
乱暴に吸い上げられたあの夜の熱が蘇って、身体の奥がじんわりと疼く。
けれど、あの日から一週間。
どんなに濃くつけられた痕も、時間とともに少しずつ薄れてきている。
この痕が完全に消えてしまったら、あの夜の出来事まで幻だったことになってしまう気がして──
ひよりは焦るように、スマホを手に取った。
『個人サロン・Lien』の予約ページ。
いつもなら指名できるはずの『一ノ瀬』の枠が、
なぜかすべてグレーアウトして選択できなくなっている。
(嘘……なんで? 担当、外れちゃったの……?)
もしかして、あの夜、自分から境界線を越えてしまったせいで、彼に引かれた…?
セラピストと客という一線を越えた客は、もう面倒を見切れないと切られてしまったのか。
心臓が嫌な音を立てて早鐘を打ち始めたその時。
手の中のスマホが、短く震えた。
メッセージの送り主は、一ノ瀬慶。
『今夜、俺の部屋に来て。
……客としてじゃなく、君自身として』
画面に表示された文字を見た瞬間、ひよりの呼吸がピタリと止まる。
以前、ひよりが体調を崩した時にも訪れた…彼のプライベートな部屋。
それは彼が『セラピスト』としての仮面を完全に捨てたという、明確な宣戦布告だった。
秘密の部屋へスキップ…♡
ここには書けない生々しい『本当の温度』の続きは…
秘密の部屋でお待ちしています🗝️✨
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